最近では4K、8Kと言われる高解像度な映像が見れるようになってきている。家電量販店に行けば有機EL(画面の薄さにも驚くが)で4K映像を流していたりして、フルHDの液晶テレビとはまた一段違った綺麗さを感じることができるだろう。
もちろんテレビ自体のスペックが良くなっているというのもあるが、映像(動画)圧縮技術も進化してきているおかげで高画質が実現できている。具体的に言うと、綺麗な映像を少ないデータ量で実現できるようになっているということだ。
筆者はMPEG1の時代から動画をエンコードしてDVDプレーヤーで再生させてみたり、ガラケーに入れてみたりと普通の方に比べれば動画圧縮技術については詳しいつもりでいた。地デジで採用されたMPEG2の画質が一番で、それ以外の形式は映像を劣化させて容量を稼ぐものだと思っていた。
その考えは間違えで、後続の新しい動画圧縮形式は圧縮方法を工夫して画質を維持したままデータ量を減らすことが出来る。
少し基礎知識として紹介しておくが、動画の画質は1秒間にどれだけのデータ量を使うかで決まってくる。これをビットレートという(単位はbps)。ビットレートが大きければ大きいほど高画質な動画になるわけである。とは言っても高画質を求めるあまり、大きくしすぎるとメディア(Blu-rayやDVD)に入らなかったり、転送(ネット速度や電波転送、ハードディスクの速度)が間に合わなくなり、カクカクしたコマ落ちした動画になってしまう。そういうわけで現状は適度なビットレート(妥協しているところもある)を使用しているわけである。
ではビットレートを落とすとどうなるかというと、見た目的にはブロック状のノイズが増えたり、もやっとしたり、発色が悪くなったりする。最近はネット配信でも高画質なものが増えてきているが、少し前のビットレートが低いものを思い出してもらうとわかりやすいだろう。一番わかりやすいのは地デジのワンセグである。よくあの程度の画質でいこうと決めたなと思うぐらい悪い画質である。ビットレートとしては128kbps程度で解像度も320×240(FullHD(2Kの4分の1))である。
動画圧縮技術はこのデータ量の問題と画質の問題を解決するために現在でも研究や開発が行われている。そして10年間隔ぐらいで新しい規格としてリリースされており、家電等に導入されて行っている。
お気づきの方もいると思うが、高解像度(4K、8K)になるとビットレートも上げないと画質が維持できなくなってくる。動画圧縮技術が進まなければBlu-rayに入れることも放送することも厳しくなってくるわけだ。そう考えるとソフトウェア的にもどれだけ重要なことかがわかってくるだろう。
また、ビットレートが低くても画質を維持できることの裏返しになるが、ビットレートを上げれば画質がより、よくなるということである。つまり同じビットレートの場合は新しい圧縮技術を使えばより画質が良くなる。
圧縮規格
動画の圧縮技術としては過去にいろいろなメーカーが独自に開発していたものもあるが、規格化されて一般的に利用されているものだけを紹介しようと思う。再生には対応した機器(デコードできる機能)が必要になるため、古い機器では再生できないということも起こる。逆に新しい機器であればすべてに対応しているということもある。対応機器を購入する場合は注意して確認する必要があるだろう。
MPEG-2・・・1995年規格化。DVD Video、Blu-ray Videoや地デジに採用され、現在最も普及している動画圧縮規格。DVDプレーヤーやBlu-rayプレーヤーであれば再生できる。
H.264/AVC・・・2003年規格化。Blu-rayやワンセグに採用されている。MPEG2と比較すると半分のビットレートで同じ画質にできるとされている。圧縮率でいうと2倍である。一部のH.264対応DVDプレーヤー、ほとんどのBlu-rayプレーヤーで再生できる。Blu-rayの規格に標準採用されているため、市販のBlu-ray DiscでもH.264で収録されていることがよくある。
H.265/HEVC・・・2013年規格化。UHD(UltraHD=4K,8K,スーパーハイビジョン)に採用されている。Ultra HD Blu-ray Discだけではなく放送にも使われている。MPEG2と比較すると4分の1のビットレートで同じ画質にできるとされている。圧縮率でいうと4倍である。2017年現在ではまだこの規格の商品が出始めたぐらいであり、普及しているとは言えないが、値段が安くなっていくにつれて今後増えてくるだろう。現状はまだプレーヤーのみで録画(エンコード)のできる商品は出てきていない。これはエンコードにかなりの性能(計算)がいるため、リアルタイムに変換できないからと考えられる。ただし、パソコン等を使ってのエンコードは可能である。iOS11の標準圧縮形式に採用。
H.266・・・開発中。2020年あたりを目標に規格化。MPEG2と比較すると8分の1のビットレートで同じ画質にできるとされている。圧縮率でいうと8倍になる予定だ。
まとめると、同一画質を維持した場合の各規格のビットレートは下のグラフになる。MPEG-2を100%とすると最新の圧縮規格のH.265は25%(4分の1)のビットレートでよいということになる。
ビットレートを低くできる=データ容量(ファイル容量)を減らすことができるので、回線が遅くても高画質で転送できたり、再エンコードしてHDD容量を稼ぐこともできる。MPEG-2で立ち止まっていては新しい技術がもったいないので積極的に新しい規格に対応したものが増えていってくれればと思う。
進化のすごいところ
ここまで見てきたように規格化されるごとに圧縮率が倍になってきている。あまり実感がわかないかもしれないが、これはすごいことだと思う。
例えば現在販売されている25GBのBD-Rには地デジの録画可能時間は3時間(180分)と書いてあるが、これは地デジで採用されたMPEG-2形式でそのまま録画した場合の時間だ。H.264/AVCを使用すれば、ほぼ同じ画質で6時間の録画が可能になる。30分のアニメであれば1クール入れることができるようになる。50GBのBD-Rであれば60分のドラマ1クールを1枚に画質を落とさず入れることができるようになる。
同じように最新のH.265/HEVCを使用すれば30分のアニメなら2クール、60分のドラマなら1クールを1枚に収録可能になる。自分で録画するだけではなく市販のものが販売するようになれば、DVD-BOXというような概念はなくなり、1枚で全話見れるということも可能になるだろう。
現在でもDVD-BOXをH.264/AVCでまとめてBlu-rayに入れれば、かなりまとまると思うのがどうだろうか(制作側にお金が入ってこなくなると言われると問題だが・・・1枚を高く売ればよいのかなと。メディアの出し入れを考えるとそちらのほうがユーザーとしてはよい)
ネット配信でも回線の遅い方でもFullHDがストリーミングできたり、ダウンロード時間が半分や、4分の1になったりと時短にもなるだろう。
もともと高画質化のための圧縮技術ではあるが、使い方によってはいろいろできるはずだ。
最後に
まだまだ、DVDが現役という方も多いと思うが、最先端としてはUHDというところまで来ている。H.265/HEVCやその次のH.266が普及すれば、さらに高画質な映像を楽しめたり、1枚のメディアに長時間録画できるようになるだろう。
このあたりの技術はわかりにくかったり、規格がたくさん出てきてわからなくなったりする部分であるので、売る側も買う側も互換性に気を付けて、両者ともに不満が出ないように、良い技術を受け入れていければと思う。
コメント
将来は地デジの電波(帯域)で4kとか8kの放送が可能になると言うことでしょうか?
その際には現在の受信装置がそのまま使える様な下位互換性は確保されるのでしょうか?
書き込みありがとうございます。
地デジの4K,8K化は、将来といっても10年以上先の話になると思いますし、計画すらないので何とも言えません。現在の地デジはMPEG2ですし、他のフォーマットを使えば見た目は同じのまま配信することは可能になると思います。
なったとしても、おそらく互換性はなく、新しくチューナーやテレビを買うことになると思います。アナログ放送からデジタル放送に移行したぐらいのインパクトがあるかもしれません。現在の帯域を維持したまま4K、8Kが出来るならいいですが、先日始まったBS/CSの4K放送ですら、既存放送(FullHD)の解像度を落として帯域を空けてから4K放送を開始しているので、地デジでも工夫しないと現在の放送を続けながらの4K放送は厳しいかもしれません(私は専門家ではないので今後どうなるかわかりません)また、20年もあれば新しい技術が出てきて、ガラッと状況が変わるかもしれません。
インターネットを利用した4K配信もすでに始まっています。こちらは最新のエンコード方式をどんどん採用していっているので、画質もトラフィックも両立させながら普及していっています。もしかすると数年後は地上波放送という概念がなくなっていて、自分の見たい番組を選んで見るという感じになるかもしれません。(現在も地上波よりもネット動画見ているという人が増えていますし)放送時間に合わせてテレビを見るというのは時間が縛られますし、CMを挟むことによって視聴するのに時間もかかってしまうので視聴者次第ではこういう時代になるのは十分に考えられます。