ここ一年でかなり普及してきているハイレゾ音源配信であるが、なかなか購入・ダウンロードに踏み切れない方も多いのではないだろうか。私もその一人であったが、moraのハイレゾ音源で聴きたい曲が出てきたので実際に購入してみた。購入に至るまでの背景、手順をまとめておきたいと思う。
これまでインターネットを使用した音楽配信はiTunesをはじめ、様々なサービスで行われてきた。ただ、圧縮音楽(正確にはロス圧縮)と言うところが、納得がいかず、私は利用することがほとんどなかった。CDという音質のものがありながら、圧縮したデータを購入すると言うことが時代と逆行していると感じたからだ。
圧縮音源というだけではなく、少し前にはDRM(デジタル著作権管理)で専用のプレーヤーが必要だったり、コピーにも制限がかけられていた。購入したにも関わらず、こんな不便なことを強いられるのであれば、CDを購入したりCDをレンタルしたほうが良いはずだ。音楽配信は音質が悪い、使い勝手が悪いというイメージがある。
そう感じる消費者も多かったためだろうか、最近はDRMフリー(制限なし)でダウンロードできるようになっている。そして本題であるハイレゾ音源の登場である。ネットワークの普及、高速化でCDより音質の良いものがネット配布できる時代に入ってきたわけである。
ハイレゾと言っているが、一般的な説明では高解像度(サンプリング周波数が48kHz,96kHz,192kHzであり、CDの44.1kHzより大きい、ビット深度が24bit,32bitであり、CDの16bitより大きい)と書かれていることが多い。もちろん大きければ大きいほど現実世界の音に近づく(アナログ波形)ので音質がよくなる可能性はある。ただ、この「ハイレゾ」はキャッチコピー的な意味合いが強いように感じる。
ここ数年、手軽さ優先で圧縮音源(ロス圧縮のmp3やaac)が普及してしまった。音質を無視した音楽配信が行われ続けてきたが、次の一手として音質が良いというのを売りにしたかったのだと思う。CD音質と書いてもインパクトがあまりないので、CDを超える音質=ハイレゾとして普及させようとしているわけである。
実際のところハイレゾと言うよりは、ロス圧縮(mp3,aac)からロスレス圧縮(FLAC,ALAC,DSD)で配布し始めたのが大きいと思う。ロス圧縮は人間の聞こえない部分のデータを省いて容量を小さくする圧縮なので、どうしても人によっては音質の低下に気づいてしまう。これがロスレス圧縮になることで完全にCDと同じ音質で手に入るということになる。そしてさらにネット配信ではCD(44.1kHz,16bit)媒体に縛られることがないのでハイレゾで配信ができるわけだ。(通常、スタジオで録音したものをダウンサンプリングしてCD規格にする。ダウンサンプリングなので変換途中に音質が変わることは十分に考えられる)
つまり、これまではアーティストからリスナーまでの間にどうしてもCDという縛りがあったが、ネットでのハイレゾ配信がはじまり、「アーティストが録音した音質そのまま」をリスナーが聞けるようになったわけである。これはアーティスト、リスナーのどちらにとっても良いはずである。また、限定配信や、完成直後の音源を高音質で配信ということも可能である。CDにする必要がないので、出来たデータをすぐに配信できるわけだ。シングル、アルバムという概念もなくなり、出来た曲から聴ける可能性もある。
実はこれまでもこのような試みはあった。SACD(Super Audio CD)やDVD Audioがそれにあたる。ただ、専用プレーヤーが必要だったり、そもそも販売しているところが少なかったり、少しのアーティストしか発売していなかったりと普及と言うところまでは行かなかった。現在はPCオーディオと呼ばれるようにパソコンさえあれば再生できるし、ハイレゾプレーヤーなども多く発売されているので、あとは音源をネットで購入するだけと言う環境にある。
そのような理由から近年注目されているし、これからも音楽鑑賞スタイルの一つとして普及していくと思われる。ここではmoraのハイレゾのダウンロード方法を紹介したいと思う。ダウンロードしたのはTK from 凛として時雨がハイレゾを語る!で紹介されている「unravel (acoustic version)」 である。インタビュー記事を読んでダウンロードしてみたくなったので実際にやってみた。MDとか圧縮音楽世代であることや、パイオニアのアンプ、ELACのスピーカーを使っているなど、インタビューの内容も興味のあるものだと思う。(同世代だからか)
moraからハイレゾをダウンロードする手順
それではダウンロードする手順を紹介する。まずはユーザー登録からである。
moraのホームページに行く。簡単に説明するとmoraはWALKMAN公式ミュージックストアで「レーベルゲート」が運営している。ハイレゾだけではなくaacの圧縮音源も配布している。(AppleでいうとiTunes Storeの位置づけ)JPOPのハイレゾも多くなってきている。10年以上前になるが批判が多かったLGCD(レーベルゲートCD)と言う違法コピーを防ぐためのCDリッピングをやりにくくするCDを導入した会社である。そう思うとDRMも無しでハイレゾを配布し始めるようになるとは、時代の流れを感じる。
規約を読み、同意できる場合は「下記の規約に同意して確認画面へ」をクリックする。
メールアドレスを確認して「仮登録メールを送る」をクリックする。
メールを送信したという画面になるので、メールアドレスで設定したメールボックスを確認する。
最初に入力したメールアドレス、パスワードを入力し「サインイン」をクリックする。
ニックネーム(何でも良い)、都道府県を入力する。他は任意である。入力したら「確認する」をクリックする。
これでアカウント登録は完了だ。一応ここまでの登録は無料である。続けて、曲を購入する場合に必要な、支払い方法を登録する。「お支払い方法を登録する」をクリックする。
アカウントメニューの「クレジットカードの追加」をクリックする。クレジットカード払いが出来ない場合や、嫌な場合はmoraカード、NET CASH、WebMoney、BitCash等のプリペードを家電量販店やコンビニで購入し、登録すれば同じように購入可能だ。ここでは残高が残るのが嫌なのでクレジットカード登録する。
クレジットカードの必要な情報を入力し、「確認する」をクリックする。
登録が完了したら上記の画面になる。「ストアに戻る」をクリックすると、前の画面に戻る。
クレジットカードが登録されたのが分かると思う。これで曲が購入できるようになった。早速、購入する曲、アルバムのページへ行こう。
ハイレゾであることを確認(通常の320kbps aacも販売している可能性があるため)してダウンロードする曲にチェックを入れ、「選択した曲を買い物カゴに入れる」をクリックする。
買い物カゴを確認してすべて購入する場合は「ご購入手続きへ進む」をクリックする。
支払いが完了すると曲がダウンロードできるようになる。ブラウザでダウンロードするには「ダウンロード」をクリックする。
ファイル名は曲名とかアーティスト名ではなく、上記のような数字になっている。ファイル名だけでは何の曲か判断できないが、ダウンロードしたFLACファイルの中にはタグが埋め込まれているため、再生プレーヤーで読み込んで使うのであればこのままでよい。「保存」をクリックして適当な場所に保存する。(再生ソフトにfoobar2000をお使いの方はライブラリで指定しているフォルダに保存すればfoobar2000に認識されるはずだ)
再生させてみよう
あとは各自お使いのハイレゾ対応(FLAC対応)ソフトウェアで再生するだけである。foobar2000では次のような感じに再生される。 下のほうにFLACで88200Hzと表示されている。ハイレゾとして再生できている状態だ。曲を選択して右クリックしてプロパティを表示させてみる。
タグが埋め込まれているのが分かる。自分で入力する必要もないしFreedbから取得する必要もない。すでにダウンロードしたファイルに埋め込まれている。まさかのTKさんの本名がComposerに入っているが、表示する機会もあまりないので気にしないことにしよう。ここまで入力されているのであれば、追加で入力することは滅多にないだろう。ついでに隣のタブも見てみる。
サンプリングレートが88.2kHz、ビット深度が24bit、FLAC Losslessなので間違えなくハイレゾファイルである。
ジャケット画像(アルバムアート)は600×600の大きさのJPEGが埋め込まれていた。曲によって違うかもしれないがこれぐらいの解像度であれば、ほとんどの環境で綺麗に表示できるだろう。ネットで探したり、スキャンする必要がないので曲と一緒についてくるというのは便利である。
最後に
登録さえしてしまえば気軽に曲が買えることが分かったと思う。ただ、現状では単曲での販売価格がかなり割高である。ここはもう少し何とかして欲しいところだ。CDからプレス代を引いたぐらいの値段なら是非買いたいところだ。
これからリリースされる音源についてはCDとハイレゾを平行販売していただけると、ありがたいと思う。また、限定音源や最速公開などもネットでは可能だと思うので是非やってほしいところではある。
また、ハイレゾでなくても44.1kHzでもロスレス圧縮でネット配信するのは価値があると思う。マスターが44.1kHzで録音したものであればそのまま公開するのがいいような気もする。ハイレゾにこだわって、ファイル形式だけ変換や消えている部分を補完しても、それは造られた音であって、実際に録音されたものではなくなってしまう。そしてニセレゾ(偽物のハイレゾ)と言われ誰も買わなくなったら、アーティストから直で届けられる音源を入手するチャンスがなくなってしまう。そうならないためにもネット配信する際には情報提供(マスターが何か、録音のサンプリング周波数、ビット深度など)が大切だと思う。
皆様もこの記事を参考に是非ハイレゾを聴いて頂ければと思う。
コメント